毎日新聞 2008年11月18日 2時30分(最終更新 11月18日 13時19分)より
平成の大合併:総務省、打ち切り検討 周辺地域衰退も招き
総務省は市町村合併を推進する方針を見直し、「平成の大合併」を打ち切る方向で検討に入った。
合併が想定以上に進んだことや、周辺地域の衰退など合併の弊害が各地で見られるようになったため。現在の新合併特例法が失効する10年3月を大合併の期限とする。「明治の大合併」「昭和の大合併」に続く市町村合併ブームを全国に引き起こした「平成の大合併」は、区切りを迎えることになる。
平成の大合併は、政府の「地方分権推進委員会」が97年の第2次勧告で、地方分権の受け皿となる市町村の体力を高めるため、市町村合併の推進を政府に求めたのがきっかけ。99年に旧合併特例法が改正され、合併した市町村が有利な条件で発行できる合併特例債が設けられたことで、一気に合併が加速した。
合併により、職員数削減による効率化などメリットもみられたが、弊害も少なくない。財政状況が悪い自治体同士による合併や合併特例債の「ばらまき」で財政がさらに悪化したり、都道府県並みの面積の自治体が増え、周辺地域の衰退や公共サービスの低下を招いたケースもある。
実際に、大分県が旧町村の住民を対象に05年から始めた聞き取り調査では「住民検診の実施個所が統合されて不便になった」「職員減や役場の注文がなくなり、店の売り上げが減った」「道路の整備が遅れるようになった」などの弊害が寄せられた。大分県は58あった市町村数が18まで減り、減少率は全国5位。県は住民の声を受けた改善策を立てているが、同じような弊害は全国で起きている。
一方、合併による市町村数の減少率をみると、明治(77.8%)、昭和(64.8%)に比べて、平成の大合併は45.1%と決して少なくはない。政府は00年の行政改革大綱で「自治体数1000」を目標にしてはいるが、「当初は2000でさえ難しいのでは、と思っていた。1773は十分な数字」(総務省幹部)というのが大勢の見方だ。
合併新法が切れる10年3月以降は、旧市町村の議員の任期を一定期間延長する在任特例など、合併を支障なく済ませる最低限の制度のみ整える。また、人口5万人程度の「中心市」と周辺町村が連携する「定住自立圏」を、合併せず自立できる選択肢として提供する。この構想を適用すれば、合併しない市町村の体力を高められることも、今回の方針転換を後押しした。
合併を巡っては、政府の地方制度調査会も検討を進めているが、「(合併新法が切れる)10年3月31日をもって平成の市町村合併には終止符を打つべきだ」(西尾勝東京市政調査会理事長)という委員も多い。総務省は調査会の審議を待って、今後のあり方を最終的に決めたい考えだ。【石川貴教】
【ことば】▽合併特例法▽
「平成の大合併」を推し進めた合併特例法には旧法と新法がある。旧合併特例法は65年施行。99年7月の改正で、国が7割を補てんする合併特例債の発行など合併する市町村への財政優遇措置が盛り込まれた。
05年3月の期限が迫ると駆け込み的に合併が加速し、1991市町村が参加。
99年3月で3232あった市町村数は旧法下で1822まで減少した。
合併旧法を引き継ぐ形となった新合併特例法(05年4月施行)は、合併推進債の発行なども認めたが
、国の補てん割合は4〜5割まで減少。既に合併が相当数進んだこともあり、
期限が切れる10年3月の市町村数は1773と見込まれ、勢いが鈍っている。
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